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東京地方裁判所 昭和35年(ワ)5837号 判決 1968年3月29日

原告 文永明

右訴訟代理人弁護士 佐藤安俊

被告 丸文交通株式会社

右代表者代表取締役 弓納持久

右訴訟代理人弁護士 戸田謙

同 工藤勇治

右訴訟復代理人弁護士 北野昭式

主文

被告の左記株主総会の各決議は、いずれも存在しないことを確認する。

1  昭和三五年四月六日開催の臨時株主総会における木村司、鎌田貫一、高塚政吉、秋山昭三および野口行孝を取締役に、斉藤俊雄および湯本嘉平を監査役に選任する決議

2  昭和三五年五月一八日開催の臨時株主総会における弓納持久、福富耕二、島先小与、鎌田貫一および松倉直作を取締役に、弓納持ひさ子、林ウメオおよび田中義之助を監査役に選任する決議

3  昭和三五年八月四日開催の臨時株主総会における

(1)  取締役松倉直作を解任する決議

(2)  弓納持ひさ子および林ウメオを取締役に、平野鈴子および鈴木ちゑ子を監査役に選任する決議

4  昭和三六年五月三〇日開催の臨時株主総会における田中義之助、平野鈴子および鈴木ちゑ子を監査役に選任する決議

5  昭和三八年二月二八日開催の定時株主総会における弓納持久、弓納持ひさ子、林ウメオおよび島先小与を取締役に、平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助を監査役に選任する決議

6  昭和三九年二月二八日開催の定時株主総会における平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助を監査役に選任する決議

7  昭和四〇年二月二七日開催の定時株主総会における弓納持久、弓納持ひさ子、林ウメオおよび島先小与を取締役に、平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助を監査役に選任する決議

8  昭和四一年二月二五日開催の定時株主総会における平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助を監査役に選任する決議

9  昭和四二年二月二五日開催の定時株主総会における弓納持久、弓納持ひさ子、林ウメオおよび島先小与を取総役に、平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助を監査役に選任する決議

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告

主文と同旨。

二、被告

原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

第二、本案前の当事者の主張

一、被告の本案前の主張

請求の趣旨第一項1の昭和三五年四月六日開催にかかる被告の臨時株主総会における決議が不存在であるとしても、右決議をもとに選任の登記がされた取締役および監査役は、いずれも同月三〇日に辞任し、同2の株主総会の決議によってその各後任者が選任され、その各登記も了した。したがって同1の株主総会の決議が不存在であることの確認を求める原告の請求は法律上の利益を欠き不適法なものである。

二、被告の本案前の主張に対する原告の答弁

被告主張の取締役および監査役の選任および辞任の各登記がされたことは認めるが、請求の趣旨第一項1の決議が不存在であることの確認を求める原告の請求が、法律上の利益を欠くとの主張は争う。

第三、本案についての当事者の主張

一、請求原因

(一)  原告は、昭和三一年四月三〇日以降被告の一万株の株式を有し、被告の株主名簿の書換も了した株主である。

(二)  被告は発行済株式総数二四万株の株式会社である。

(三)  被告は、請求の趣旨第一項1ないし9記載の株主総会を開催し、同記載の各決議をしたとして、その決議にもとづき役員選任の各登記をした。

(四)  しかしながら、右各決議はいずれも法律上存在しないものである。

しかるに、被告はこれを争うので、その確認を求める。

二、請求原因に対する被告の答弁

(一)  請求原因(一)ないし(三)の事実は認める。同(四)の主張は争う。

三、被告の主張

請求の趣旨第一項1ないし9の被告の株主総会は、次のような手続によって開催されたものであって、法律上不存在といえないのみでなく、同1の株主総会の決議については、原告はその不存在を主張しえないものである。すなわち、

(一)  被告の昭和三五年四月六日開催の臨時株主総会

1(イ) 昭和三五年四月五日、当時の被告の代表取締役文永盛三こと文永盛および被告のその余の全取締役である須藤守重、旭大一および森本マツが、取締役会の招集手続の省略に同意し、文を除くその余の右取締役全員出席のもとに、取締役会を開催し、右出席取締役全員一致の決議をもって、取締役および監査役の任期満了にともなう後任者選任のため臨時株主総会を招集する旨の決定をした。

(ロ) 右取締役会の決議にもとづき、同月五日代表取締役文永盛は、当時の被告の株主名簿上の全株主である木村司、鎌田貫一、文永盛、原告、厳紹光、および周淡郷の六名に対し、秋山哲一をして、右臨時株主総会の招集通知書をそれぞれ手交させて招集通知をするとともに、右全株主から招集期間短縮の同意をえた。

(ハ) 右招集にもとづき、同月六日午前一〇時被告本社において、前記六名の株主全員出席のもとに株主総会が開催され、全員一致の決議により取締役に木村司、鎌田貫一、高塚政吉、秋山昭三および野口行孝の五名を、監査役に斉藤俊雄および湯本嘉平の二名を選任した。

2 かりに、右株主総会の招集手続に瑕疵があるとしても、1(ハ)において主張のとおり、右総会は株主全員が出席して開催されたものであるから、招集手続の瑕疵は治癒され適法なものである。

3 原告は、後記(二)の株主総会について、昭和三五年五月一二日被告に対し、累積投票の請求をした。このことは、右1の株主総会における取締役および監査役の選任が適法に行われたことを承認し、これを前提にしたものであって、その後にこれを不存在である旨主張することは禁反言の法理に照らして許されないところである。

(二)  昭和三五年五月一八日開催の臨時株主総会

1 昭和三五年四月六日、右(一)(ハ)の株主総会後、同総会によって選任された前記取締役五名は、取締役会を開催し、木村司を被告の代表取締役に選任した。

2 同月三〇日右取締役および監査役全員が辞任したので、同日右取締役全員は、取締役会の招集手続の省略に同意し、被告本社において取締役会を開催し、全員一致の決議をもって、後任者選任のための株主総会を同年五月一八日被告本社において開催する旨の総会招集決定をした。

3 右取締役会の決議にもとづき、代表取締役木村司は同月二日発信の郵便により、当時の被告の株主名簿上の株主である前記(一)1(ロ)の六名に対し、右株主総会の招集通知をした。

4 右招集にもとづき、同月一八日被告本社において、原告および文永盛を除く四名の株主が出席して株主総会が開催され、弓納持久、福富耕二、島先小与、鎌田貫一および松倉直作の五名を取締役に、弓納持ひさ子、林ウメオおよび田中義之助の三名を監査役にそれぞれ選任する旨の決議がされた。

(三)  昭和三五年八月四日開催の臨時株主総会

1 同年五月一八日右(二)4の株主総会後、同総会によって選任された前記取締役五名は、取締役会を開催し、弓納持久を被告の代表取締役に選任した。

2 同年七月二〇日、右取締役からなる取締役会の決議にもとづき、代表取締役弓納持久は、同年八月四日に臨時株主総会を招集する旨の通知を当時の被告の株主たる弓納持久、広川孝、井田潔、島田博治、中村厳、戸田謙、福富耕二、文永盛および原告に対して発し、右株主総会は、同日午前一〇時被告本社において、弓納持久および福富耕二の二名の株主(出席株主の株式総数一九二、一〇〇株)が出席して開催され、右出席株主全員一致の決議により、取締役松倉直作を解任し、その後任者と、取締役鎌田貫一の辞任にともなうその後任者として、取締役二名の選任および監査役二名辞任にともなう監査役二名の選任を行ない、同じく右出席株主全員一致の決議により、取締役に弓納持ひさ子、林ウメオ、監査役に平野鈴子、鈴木ちゑ子をそれぞれ選任した。

(四)  昭和三六年五月三〇日開催の臨時株主総会

1 昭和三五年八月八日、(二)4および(三)2の株主総会の決議によって選任された取締役弓納持久、福富耕二、島先小与、弓納持ひさ子および林ウメオの五名は、取締役会の招集手続の省略に同意し、被告本社において、取締役会を開催し、過半数をもって弓納持久を被告の代表取締役に選任した。

2 昭和三六年五月一五日、右取締役からなる取締役会の決議にもとづき、代表取締役弓納持久は、同月三〇日臨時株主総会を招集する旨の通知を(三)2記載の株主九名に発し、右株主総会は、同日午前一〇時被告本社において、株主三名が出席(出席株主の株式数一九一、一〇〇株)して開催され、監査役一名の任期満了、同二名の辞任にともなう後任監査役の選任を行ない、右出席株主全員一致の決議により、田中義之助、平野鈴子および鈴木ちゑ子を選任した。

(五)  昭和三八年二月二八日開催の定時株主総会

昭和三八年二月一三日、(四)1記載の取締役からなる取締役会の決議にもとづき、代表取締役弓納持久は、同月二八日定時株主総会を招集する旨の通知を前記株主九名に発し、右株主総会は、同日午後一時雅叙園において株主四名が出席(株式総数一九三、一〇〇株)して開催され、取締役および監査役の任期満了にともなう後任者の選任を行ない、いずれも右出席株主全員一致の決議により、取締役に弓納持久、弓納持ひさ子、林ウメオおよび島先小与の四名を、監査役に平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助の三名を選任した。

(六)  昭和三九年二月二八日開催の定時株主総会

1 昭和三八年二月二八日午後三時、右(五)の株主総会の後、同総会によって選任された前記取締役四名は、取締役会の招集手続の省略に同意して取締役会を開催し、被告の代表取締役に弓納持久を選任した。

2 昭和三九年二月一三日右取締役からなる取締役会の決議にもとづき、代表取締役弓納持久は、同月二八日定時株主総会を開催する旨の通知を前記株主九名に発し、右株主総会は、同日午後一時雅叙園において、株主三名が出席(出席株主の株式総数一七五、一〇〇株)して開催され、監査役の任期満了にともなう後任者の選任を行ない、右出席株主全員一致の決議により、平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助の三名を選任した。

(七)  昭和四〇年二月二七日開催の臨時株主総会

昭和四〇年二月一二日、前記(五)の株主総会の決議により選任された前記取締役からなる取締役会の決議にもとづき、代表取締役弓納持久は、同月二七日定時株主総会を開催する旨の通知を前記九名の株主に発し、右株主総会は、同日午後一時雅叙園において、株主三名が出席(出席株主の株式数一七五、一〇〇株)して開催され、取締役および監査役の任期満了にともなう後任者の選任を行ない、右出席株主全員一致の決議により、弓納持久、弓納持ひさ子、林ウメオ、および島先小与の四名を取締役に、平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助の三名を監査役に選任した。

(八)  1 昭和四〇年二月二七日午後二時、右(七)の株主総会後、同株主総会の決議により選任された前記取締役四名は、取締役会の招集手続の省略に同意して、取締役会を開催し、被告の代表取締役に弓納持久を選任した。

2 昭和四一年二月一〇日、右取締役からなる取締役会の決議にもとづき、代表取締役弓納持久は、同月二五日定時株主総会を開催する旨の通知を前記九名の株主に発し、右株主総会は、同日午前一一時雅叙園において、株主三名が出席(出席株主の株式総数一七五、一〇〇株)して開催され、監査役の任期満了にともなう後任者の選任を行ない、右出席株主全員一致の決議により、平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助の三名を選任した。

(九)  昭和四二年二月二五日開催の定時株主総会

昭和四二年二月一〇日、前記(七)の株主総会において選任された前記取締役からなる取締役会の決議にもとづき、代表取締役弓納持久は、同月二五日、定時株主総会を開催する旨の通知を前記九名の株主に発し、右株主総会は、同日午前一二時雅叙園において、株主四名が出席(出席株主の株式総数一九二、一〇〇株)して開催され、取締役および監査役の任期満了にともなう後任者の選任を行ない、右出席株主全員一致の決議により、取締役に弓納持久、弓納持ひさ子、林ウメオおよび島先小与の四名を、監査役に平野鈴子、鈴木ちゑ子および田中義之助の三名を各選任した。

四、被告の主張に対する原告の答弁

(一)  被告の主張(一)1の事実のうち、昭和三五年四月五日当時の被告の取締役および代表取締役が被告主張のとおりであること、原告および文永盛が、被告の株主名簿上の株主であることはいずれも認めるが、被告主張のその余の株主が被告の株主名簿上の株主であるかどうかは不知、その余の事実はすべて否認する。同2の事実は否認する。同3の事実のうち、原告が被告主張のとおり累積投票の請求をしたことは認めるが、その余の主張は否認する。

(二)  同(二)1の事実のうち、被告の取締役が被告主張のとおりであることは否認する、その余の事実は不知。同2の事実は不知。同3の事実のうち、被告主張のような株主総会の招集通知が原告にあったことは認めるが、その余の事実は不知。同4の事実のうち、原告が被告主張の株主総会に出席しなかったことは認めるが、その余の事実は不知。

(三)  被告の主張(三)ないし(九)の事実のうち、被告主張の(三)ないし(九)の株主総会がその主張の日にそれぞれ開催され、被告主張のとおりの決議がされたことは認めるが、右各株主総会開催当時の被告の取締役および代表取締役が被告主張のとおりであることは否認する。その余の事実はすべて不知。

(四)  被告主張の各株主総会は、いずれも招集権限のない者の招集にかかるものであって、法律上不存在というべきである。

第四、証拠≪省略≫

理由

第一、被告の本案前の主張に対する判断。

一、被告は請求の趣旨第一項1の株主総会の決議が不存在であるとしても、右決議によって選任された取締役および監査役は、いずれも同月三〇日辞任し、同2の株主総会の決議によって、その後任者が選任され、右各登記もされたのであるから、同1の株主総会の決議の不存在の確認を求める原告の請求は、法律上の利益を欠くものである旨主張する。

しかしながら、請求の趣旨第一項2の株主総会の決議の招集手続に関する被告の主張から明らかなとおり、同1の株主総会の決議が不存在と認められれば、同2の株主総会の決議も招集権限を有する者の招集を欠くものとして、法律上不存在と認めざるをえない関係にあり、また同2の株主総会の決議後本件口頭弁論終結当時に至るまでの被告の役員選任の株主総会の決議である同3ないし同9の株主総会の各決議についても、原告は、その不存在の確認を求め、これに対する被告の主張からすれば、右は、いずれも同1の決議が不存在と認められれば、順次右同1および同2の株主総会の各決議について述べたと同一の理由により、法律上不存在と認むべきものである。そして、同1ないし同9の株主総会の各決議が法律上不存在と認められれば、被告の取締役及び監査役は、いずれも、請求の趣旨第一項1の株主総会の決議前の状態に復し、かりに右決議前の取締役及び監査役が辞任しても、これらの者は、商法二五八条一項および同二八〇条により取締役および監査役としての権利義務を有することが明らかとなるに至るものである。したがって、同1の株主総会の決議によって選任された取締役および監査役が、辞任し、同2の株主総会の決議によってその後任者が選任されたとしても、同1の株主総会の決議の不存在の確認を求める原告の請求は、確認の利益を欠くものとはいえないから、被告の本案前の主張は採用しない。

第二本案についての判断

一、原告が、昭和三一年四月三〇日以降被告の一万株の株式を有し、被告の株主名簿の書換を了した株主であること、被告が、発行済株式総数二四万株の株式会社であること、被告が請求の趣旨第一項1ないし同9記載の株主総会を開催し、同記載の各決議をしたとして、その各決議にもとづき、役員選任および退任の各登記をしたことはいずれも当事者間に争いがない。

二、被告の主張に対する判断

(一)、昭和三五年四月六日開催(請求の趣旨第一項1)の臨時株主総会の決議についての判断

1 昭和三五年四月五日当時、被告の取締役が、文永盛、須藤守重、旭大一および森本マツの四名であったこと、文永盛が被告の代表取締役であったこと、同人が被告の株主名簿上の株主であったことはいずれも当事者間に争いがない。

2 被告は、右株主総会は、右取締役からなる取締役会の決議にもとづき、代表取締役文永盛が招集して開催されたものである旨主張するが、右主張を認めるに足る証拠はなく、かえって証人文永盛三こと文永盛の証言によれば、右株主総会開催のための被告の取締役会は開催されたことはなく、また、代表取締役たる文永盛が、右株主総会の招集通知をした事実も存在しないことが認められる。他に右認定を覆すに足る証拠はない。

3 次に、被告は、右株主総会は、株主全員が出席して開催されたものであるから、適法である旨主張し、乙第一号証には右主張にそう記載があるが同号証が真正に成立したものであることを認めるに足る証拠はなく、また被告の株主であることにつき当事者間に争いのない原告が、右株主総会に出席したことを認めるに足る証拠はないから、その余の点について判断するまでもなく、右主張は採用できない。

4 次に被告は、原告が右株主総会の不存在を主張することは禁反言の法理に照らして許されない旨主張するので、この点につき判断するに、原告が、請求の趣旨第一項2の株主総会において累積投票の請求をしたこと(この点は当事者間に争いがない。)をもって、直ちに、同1の株主総会の決議を認め、それを前提に右累積投票の請求をしたものであるとまで認めることはできないし、また他にこれを認めるに足る証拠もないから、右被告の主張も採用できない。

5 以上のとおり、被告が、昭和三五年四月六日開催したと主張する請求の趣旨第一項1の臨時株主総会は、その招集のための取締役会も存在せず、かつまた代表取締役文永盛の招集にかかるものではないから、法律上不存在と認めざるをえない。

(二)、昭和三五年五月一八日開催(請求の趣旨第一項2)の株主総会の決議についての判断。

被告は昭和三五年五月一八日開催の請求の趣旨第一項2の株主総会は、同1の株主総会の決議によって選任された取締役からなる取締役会が招集決定をし、かつその取締役会が選任した代表取締役木村司が招集した適法なるものである旨主張するが、同1の株主総会の決議は、前認定のとおり法律上不存在である以上、同2の株主総会の招集を決定した取締役会を構成する取締役および同総会の招集をなした代表取締役木村司は、いずれも正当に選任されたものでないことに帰するから、同2の株主総会の決議も結局(一)において述べたと同一の理由から法律上不存在と認めざるをえない。

(三)、被告の抗弁(三)ないし(九)(請求の趣旨第一項3ないし9)の株主総会の各決議についての判断

右各株主総会の招集を決定した被告の取締役会を構成する取締役及び招集通知をした代表取締役に関する被告の主張は、請求の趣旨第一項3の株主総会については、前記同2の株主総会の決議を、同4および5の各株主総会については、同2および同3の株主総会の各決議を、同6および同7の各株主総会については、同5の株主総会の決議を、同8および同9の各株主総会については同7の株主総会の決議をそれぞれ前提にするものであるが、前記(一)および(二)において、請求の趣旨第一項1および同2の株主総会の決議について述べたと同一の理由から、前提となる右各後者の株主総会の決議が法律上不存在と認められる以上、その各前者の株主総会の決議もまた法律上不存在と認めざるをえない関係に立つものであるところ、同2の株主総会は、前認定のとおり法律上不存在であるから、結局同3ないし同9の株主総会の各決議は順次いずれも法律上不存在と認めざるをえない。したがって被告の抗弁(三)ないし(九)の主張も採用できない。

(四)、以上のとおり、請求の趣旨第一項1ないし同9の各株主総会の各決議は、いずれも法律上不存在であるところ被告は、その存在を主張し、右各決議にもとづき、役員選任及び退任の各登記をしているから、原告の本訴請求をすべて正当として認容することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 位野木益雄 裁判官 篠原幾馬 柴田保幸)

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